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12月, 2025の投稿を表示しています

触ってないのに、奥が熱くなってるって言われた

俺は五十二歳。 会社では「部長」、家では「お父さん」と呼ばれる、ごく普通のサラリーマンだ。 そんな俺が、今夜もホテルの一室で、三十九歳の倉橋美咲と向き合っている。 https://youtu.be/oR6xPM2N4bc 彼女は取引先の総務課で働く、いつも穏やかな笑顔の人妻だ。 出会って一年。最初は仕事の打ち合わせが終わった後の軽いお茶。 それがいつしか、月に一度か二度、こうして二人きりで話す間になった。 今夜も、彼女から「少しだけ、お話しできませんか」と連絡が来た。 夫は出張で不在。子どもはもう寝ている時間だという。 部屋に入ると、彼女はソファに腰を下ろし、膝の上で指を絡めていた。 なんだか落ち着かない様子だ。 「どうした? 珍しく緊張してるみたいだな」 俺が笑いながら言うと、彼女は小さく首を振った。 「だって……部長の前だと、いつも変になっちゃうんです」 「変?」 「声が震えるし、顔が熱くなるし……  まるで学生の頃に戻ったみたいで」 俺は隣に座った。 肩が触れない距離。 でも、それだけで空気が少し変わる。 「俺もだよ」 俺は正直に言った。 「君と会う日は、朝から落ち着かない」 彼女は驚いたように顔を上げた。 「部長まで……?」 「ああ。五十二のおじさんが、こんな気持ちになるなんて自分でも笑える」 彼女はふっと笑って、でもすぐに目を伏せた。 「ねえ、部長……  触ってないのに、身体の奥が熱くなってるって、言ったら変ですか?」 その一言で、俺の胸がどきりと鳴った。 「……変じゃない」 俺はできるだけ落ち着いて答えた。 「俺も、君の声だけで胸が締めつけられる」 彼女は頬を膨らませ息を吐いた。 「夫には絶対言えない言葉なのに……  部長には、つい本音が出ちゃう」 「俺も同じだ。  妻の前では絶対言えないことを、君にだけ言える」 静かな時間が流れた。 時計の秒針だけが、こつこつと音を立てる。 「触ってないのに、こんなに熱くなるなんて……  私、どうかしてるのかもしれません」 「俺もだよ。  君の瞳を見てるだけで、胸の奥が疼くような気がする」 彼女はゆっくりと顔を上げた。 目が潤んでいる。 「部長……好きです」 「俺もだ」 「でも、だめですよね。私たち」 「わかってる」 「それなのに……」 「それなのに、会いたくなる」 彼女は小さく頷いた。 「帰らなきゃいけない時間なのに...

四十歳を過ぎてこんなに濡れてるの、恥ずかしいわ

四十歳を過ぎて三年。私は「由美子」という名前を、誰にも呼ばれなくなって久しい。 夫は単身赴任で二年目。娘は大学で一人暮らし。家には私と、夜の静けさだけが残った。 https://youtu.be/fQ1ZRiA9BTg ある十月の夕方、玄関のチャイムが鳴った。 宅配かと思いドアを開けると、そこに立っていたのは、二十年近く前に私が家庭教師をしていた少年だった。 「先生……お久しぶりです。突然すみません」 名前は加賀見翔太。 昔は背が低くて、いつも俯いてばかりだった子が、今は私を見下ろすほどに背が高くなっていた。スーツの襟元から覗く鎖骨に、大人の色気が漂っている。 「先生のお母様が亡くなられたと聞いて……お線香を上げさせてください」 母は先月、闘病の末に逝った。葬儀には来られなかったらしい。 私は黙って彼をリビングに通した。 お仏壇の前で手を合わせる彼の横顔を見ているうちに、胸の奥がざわざわと疼き始めた。昔と同じ、静かな横顔。でも、もう子供じゃない。 「お茶を淹れますね」 立ち上がろうとしたとき、彼が私の手首を掴んだ。 「先生……ずっと、言えなかったことがあります」 指先が熱い。 「高校三年の冬、先生が辞めるとき……俺、先生のことが好きだったんです」 私は息を呑んだ。 「ごめんなさい、そんなつもりじゃ……」 「知ってます。先生は俺を生徒としてしか見てなかった。でも、俺は本気だった」 彼の声が低く震える。 「今でも、好きです」 二十歳以上離れた男の子に、こんなふうに言われるなんて。 頭では「だめよ」とわかっているのに、身体が熱くなる。 「翔太くん……もう、昔の話じゃないのよ」 「知ってます。だからこそ、言いたかった」 彼が一歩近づく。私は後ずさり、ソファに腰を落とした。 「先生、泣いてる?」 「……違うわ」 でも、頬が濡れている。 彼が膝をついて、私の前にしゃがみ込んだ。 昔と同じ目線。昔と同じ、優しい瞳。 「先生が泣くの、初めて見ました」 「恥ずかしいわ……こんな歳して」 私は顔を背けた。 すると彼の指が、そっと私の頬に触れた。 「先生……」 掠れた声で名前を呼ばれて、胸が締めつけられる。 「こんなに濡れてるの、恥ずかしいわ」 私は呟いた。 彼の指が止まる。 「え……?」 私はゆっくりと顔を上げた。 涙で滲む視界の中、彼の驚いた顔が見えた。 「濡れてるのは……ここよ」 ...