じいさんと家政婦さん 家の中はいつも通り静かだった。カーテンが揺れる音、台所から聞こえる包丁の音、そして家政婦さんの柔らかな笑い声。65歳を過ぎたじいさんには、どこか落ち着いた日常が心地よく、家政婦さんが来る日を楽しみにしていた。 その日も彼女は、いつものように動きやすい服装で掃除に取りかかっていた。彼女のポッチャリとした体形、白いシャツと軽いジーンズの姿が、じいさんにはどこか温かみを感じさせて、ふと胸が温かくなるのを覚えた。もちろん、彼女は絶世の美女ではない。しかし、何とも言えない色っぽさがあり、じいさんの心を引きつける。 「おじさん、また足元が汚れてますよ。」 家政婦さんが優しく言った。じいさんは、軽く手を振って答える。 「まあ、気にしなくてもいいよ。俺はもう長くないし、掃除なんてどうでもいいさ。」 しかし、彼女はその言葉を無視して、じいさんの靴を丁寧に拭いてくれた。じいさんはその仕草を見て、なぜか胸がドキリとする。「なんだ、俺はこんな年齢になってもまだ女を見る目があるのか?」と自嘲しながらも、彼女の手のひらが靴を拭う様子が目に焼きついて離れなかった。 その日の午後、台所で彼女が煮物を作っていると、じいさんはテーブルに座って一人で本を読んでいた。台所から漂う香りが、じいさんの鼻をくすぐる。 「いい匂いだなぁ…」 じいさんは独り言をつぶやき、つい口元がほころぶ。しかし、彼女が振り返ってニコッと笑うと、その笑顔がじいさんの心をさらに乱す。若い頃には感じなかった、どこか懐かしいような、胸の奥が熱くなる感覚。じいさんはその思いに困惑していた。 その夜、じいさんは布団に入ったものの、なかなか眠れなかった。目を閉じると、家政婦さんの笑顔が浮かんでくる。そして、彼女が何気なく見せた仕草、例えば髪をかき上げるときの無意識な優雅さ、汗を拭うその仕草が、じいさんの心に強く残っていた。 「こんな年で恋なんておかしいだろう…」 じいさんは自分を責めるように呟いたが、心の中では次に家政婦さんが来る日を心待ちにしている自分を否定できなかった。 「でも、どうしてもあの子と一緒に…」 そんなある日、偶然家政婦さんの話を聞いてしまった。彼女が経済的に困っていることを。じいさんは、その話を聞いた瞬間、心が揺れた。家政婦さんは普段、誰にも頼らずに仕事をこなしていた。しかし、その背後には多...