夜、ひとけのないリビングで、俺は静かに水を飲んでいた。
眠れなかった。
理由は……わかってる。
風呂上がりの彼女が、あの姿でキッチンに立っていたせいだ。
……継母。俺の父の再婚相手。
年齢は俺より一回りも上。
けれど、どうしてだろう。
若い女にはない、しっとりとした気配が、肌の下から滲み出てくるようだった。
「眠れないの?」
浴衣の襟元を少し浮かせながら、彼女は俺の向かいに腰を下ろした。
グラスに氷を落とす音が、やけに耳に残る。
そして、彼女の肌に落ちる水滴……それを指でぬぐう、その仕草に俺は、目が離せなかった。
「今日ね、暑くて……寝苦しいの。だからつい、こんな格好になっちゃって……」
とろりとした声。
男を試すような視線。
けれど、彼女の目は笑っていなかった。
なにか……寂しさのような、やり場のない感情が、そこに滲んでいた。
俺は返す言葉もなく、ただグラスの氷を転がした。
何か言えば崩れてしまいそうな、緊張の糸が、そこにあった。
「……あなた、もう大人ね」
ぽつりと、彼女が呟いた。
「ちゃんと私を、女として見てる目をしてたわ」
俺の心臓が跳ねる。
見透かされていた……いや、見られていたんだ、ずっと。
彼女は立ち上がり、俺の背に回ると、そっと手を置いた。
背中越しに感じる、柔らかな指先。
心を揺さぶられるには、十分すぎる温度だった。
「でもね……これ以上はダメよ。あなたが止めてくれなきゃ、私、間違えてしまうから」
その一言が、俺の理性をぎりぎりのところでつなぎ止めた。
ふと気づくと、部屋の中にあるのは、扇風機の音と、ふたりの呼吸だけだった。
「……おやすみ」
俺が絞り出したその言葉に、彼女は微笑んで、階段を上がっていった。
その背中を、見送ることしかできなかった俺は、
グラスの氷が溶ける音を、いつまでも聞いていた。
――俺は、今夜を超えた。
でも、この静かな闇の中で、俺の中の何かは……確かに揺らいでいた。
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