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旦那の会社の部下と密会するのはだめですか?「奥さんの禁じられた遊び」


ねえ、聞いてくれる?最近、私、自分でも信じられないようなことをしてしまったの。分かってる、こんなの絶対にいけないことだって。でも、どうしてもあの夜のことを思い出すと、胸がざわつくのよ。  


あの日は雨だった。窓の外はしとしとと音を立てていて、まるで私の心を映しているみたいだったの。何か変わり映えのしない日常を壊したい、そんな衝動に駆られていた時に彼――渡辺君からのLINEが来たの。  


「今日、少し話せませんか?」って。何の前触れもなくよ。普通なら、「どうして?」とか「何の用?」って返すんだろうけど、その日は違った。ただ、「いいわよ」って即答してた。なんでそんなに軽率だったのか、自分でも分からないの。  


待ち合わせは、駅前の小さなカフェ。旦那の部下と、こんな形で会うなんてね。私の中ではいけないことだと分かりつつも、心のどこかでワクワクしてる自分がいたのよ。  


カフェのドアを開けた瞬間、渡辺君がすぐに目に入った。スーツ姿なのに、どこかリラックスした雰囲気。普段は旦那と一緒にいる彼しか見たことがなかったけど、その日は一人の男性として目に映ったの。  


「お疲れ様です。わざわざありがとうございます。」  

彼が少し緊張気味にそう言って、席を勧めてくれた。  


「別にいいわよ。で、何の話?」  

私も素っ気なく答えたけど、心の中ではドキドキしてたの。だって、彼の視線が真っ直ぐで、なんだか逃げ場がないような気がして。  


「実は…奥さんに相談したいことがあって。」  

その「奥さん」って呼び方が、なんだかくすぐったかったわ。私の名前じゃなくて、旦那の奥さんとして見られてることに、どこか寂しさと嬉しさが混ざったような感情が湧いたの。  


話の内容は仕事の愚痴だった。上司の厳しさやプレッシャーについて、彼が真剣に語る姿は、意外と熱っぽくて新鮮だったのよ。でも、私が彼の言葉に聞き入っていると、ふと彼がこう言ったの。  


「…奥さんって、普段どんなふうに過ごしてるんですか?」  

突然の質問に戸惑ったけど、正直に答えたわ。「特に何も。家のことして、たまに友達と会って…普通よ。」  


彼は少し微笑んで、「普通、ですか。でも、それって寂しくないですか?」って。  


その一言が、私の心にぐさりと刺さったの。寂しいかどうかなんて、自分でも考えたことがなかった。だけど、彼にそう言われると、何かが崩れた気がしたの。  


気付けば、私たちは深い話に入り込んでいた。自分がいかに退屈な日常に埋もれていたか、彼に話すことで初めて気付かされたの。  


カフェを出る頃には、雨は止んでいて、夜風が肌に心地よかった。駅まで送るという彼の提案を断ることもできたけど、なぜかそのままついていったの。  


「また、話せますか?」  

別れ際の彼の言葉に、私は曖昧に微笑むだけだった。でも、胸の中にはっきりと残ったのは、久しぶりに感じたときめきだったの。  


いけないことだと分かってる。でも、もう一度彼に会いたい。そんな気持ちが抑えられなくて…どうしたらいいと思う?  







その後ね、どうしても渡辺君のことが頭から離れなくなったの。分かってるわよ、彼はただの旦那の部下。それ以上でもそれ以下でもない。でもね、彼が私の「普通」に穴を開けてくれたような気がして…それが何とも言えない快感だったの。  


数日後、彼からまたLINEが来たのよ。  

「この間はありがとうございました。またお時間いただけませんか?」  

その瞬間、胸の奥が熱くなったわ。誰かに必要とされること、しかもそれが家庭の中じゃなくて外の世界でなんて、久しぶりの感覚だったから。  


待ち合わせたのは、少し洒落たバーだった。いつものカフェじゃなくて、暗い照明の中で小声で話せるような場所。ねえ、こんな場所に来るだけでもう「密会」って言えるんじゃないかしら?  


「奥さん、似合ってますね。」  

そう言って彼がグラスを差し出してきた時、少しドキリとしたの。あの日よりもずっと近く感じる彼の声。まるで私を包み込むみたいで…でも、なんでだろう。罪悪感よりも、嬉しさの方が強かったの。  


「似合ってるって、何が?」  

笑いながら返したけど、ほんとは分かってたわ。少し華やかな服を選んで、メイクも普段より丁寧にしてきたんだから。  


彼はゆっくりとグラスを傾けながら、目を逸らさずにこう言ったのよ。  

「いつもと違う奥さんを見てみたいなって、思ったんです。」  


その一言が、全身を痺れさせたわ。旦那にだって言われたことのないような言葉。ねえ、こういうのってずるいよね?こんな風に優しい言葉をもらったら、誰だってその気になるでしょ?  


会話は弾んで、気づけば終電の時間が近づいていたの。普通ならここで解散よね。でも、その日は違った。私が言っちゃったのよ。  

「もう少しだけ、話したいな。」  


ねえ、どう思う?これって誘ってるって思われても仕方ないよね。でも、その時の私は理性よりも、彼ともっと一緒にいたいっていう気持ちの方が勝ってたの。  


彼が「じゃあ、少し歩きましょうか」って言ってくれて、外に出た時には雨は止んでいたわ。夜風が肌を撫でるたびに、心の中のモヤモヤが薄れていく気がしたの。でも、その代わりに胸の奥にある熱はどんどん強くなっていったの。  


暗い街灯の下、彼がふと立ち止まって私を見つめたの。  

「奥さん、こんなこと聞くのは失礼かもしれませんけど…」  

「なに?」  

「幸せですか?」  


その質問に、なんて答えればいいか分からなかった。私が黙り込むと、彼は続けたのよ。  

「僕は…奥さんとこうしているだけで、すごく嬉しいんです。でも、それが迷惑なら、ごめんなさい。」  


ねえ、こんな言葉、聞かされたらどうする?私は何も言えなくて、ただ彼の目を見つめてたの。自分がどうしたいのか、本当に分からなかった。でも、彼の視線があまりにも真剣で、私はつい口を開いてしまったのよ。  

「迷惑なんかじゃない。むしろ…私も、楽しい。」  


その言葉を言い終わるかどうかのタイミングで、彼の手が私の手に触れたの。軽く握られただけなのに、心臓が飛び出しそうだった。  



次の日、鏡に映った自分を見て、思わずため息をついたわ。昨夜の自分の行動を思い返してみて、「こんなこと、許されるわけがない」って自分に言い聞かせたの。でも、心のどこかでまた彼と会いたいと思っている自分がいて…ねえ、これってどうしたらいいと思う?  


私、戻れるのかな。それとも、このまま足を踏み入れてしまうのかな。分からない。でも、ひとつだけ分かるのは、こんな気持ちになったのは何年ぶりかしらってこと。  




「あら、またこのカフェね。あなたも、よく覚えてるじゃない。初めて会った時も、ここだったわよね?」  

私は笑みを浮かべてテーブルに肘をつきながら、彼の顔を見つめた。小さな丸テーブルには、二つのカフェラテが置かれている。彼は、旦那の会社の部下だ。私の目の前で少し居心地悪そうに微笑んでいる彼を見ると、不思議と心が躍るの。  


「奥さん…が、この店が好きだって言ってたので。」  

「あら、覚えててくれて光栄だわ。けど…呼び方、奥さんじゃなくて名前で呼んでほしいわ。私は真由美よ。」  

そう言って彼の目を覗き込むと、耳まで赤く染まるのがわかった。可愛いと思った自分に驚いた。 


彼と出会ったのは、旦那の会社の忘年会だった。退屈な会話に紛れてふと目が合った瞬間、彼の真っ直ぐな視線が胸に刺さった。それから旦那が出張中に何度か偶然を装って連絡を取り、こうして会うようになったの。  


「こんなこと、やっぱりよくないんじゃないかって思うんです。」  

彼の声が小さく震える。それが彼の誠実さを物語っているようで、逆に私を惹きつける。  


「そんなこと言われると、ますます会いたくなっちゃうわ。」  

そう言いながら、自分の中の罪悪感と興奮の狭間で揺れる感覚に酔いしれていた。  


カフェの外では木枯らしが吹き、冬の薄い陽射しが窓を通して私たちを照らしている。この時間がいつか終わることはわかっている。それでも、このひとときが愛おしくてたまらない。  


「旦那さんにバレたら、僕…仕事を失いますよね。」  

彼が視線を落とし、心配そうに言う。その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がズキッと痛んだ。  


「大丈夫よ。私、そういうこと、ちゃんと隠すの得意だから。」  

そう言ったけれど、本当はわかっている。この関係が壊れるときは必ず来ると。それでも、彼といると、私自身が女性として輝いている気がするの。  


「真由美さん、僕…、あなたが…。」  

言いかけた言葉を飲み込む彼。私は手を伸ばし、彼の手をそっと握る。温かくて、優しい手。旦那の手とは違う、不思議な安心感がそこにあった。  


「ねえ、渡辺君。私たち、まだもう少しだけ、このままでいられるかしら?」  

涙がこぼれそうになるのを抑えながら、彼の目を見つめた。  


彼は一瞬躊躇した後、静かにうなずいた。その答えに救われたような気持ちになりながらも、心のどこかではわかっている。この遊びが禁じられているからこそ、こんなにも刺激的なのだと。  


店を出て、冷たい風が頬を撫でる。彼と肩を寄せ合いながら歩く冬の道。今この瞬間だけでも、どうか壊れないでいてほしいと願った。  


**(終わり)**  


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