人生の半分以上を生きてきて、感情がこんなにも揺れる瞬間が待っているなんて、誰が思うでしょう。四十になったばかりの春、同窓会の案内状が届いたとき、特に大きな期待はしていなかったのに。 「久しぶりにみんなに会えるのは楽しみだけど、もうこういう会には慣れちゃったわね」なんて夫に言いながら、心の奥底では、ちょっとした興奮があったのかもしれません。でもまさか、あの人が来るとは……。 同窓会会場のホテルに着いて、懐かしい顔たちが次々挨拶を交わしていく中、私は、あの頃の自分に戻るような居心地の悪さを感じました。昔から、無理に笑顔を作るのは得意じゃなかった。けれどそれが不意に消えたのは、部屋の向こう側で彼を見つけたときです。その瞬間、胸の奥にしまっていたはずの感覚が、波のように押し寄せてきました。 彼が歩み寄ってきたとき、なぜか息が詰まる。変わらない優しい笑顔、「久しぶりだね」という声。二十年以上も経っているのに、少しもあの頃と変わらない。それなのに私の心は、あの時よりもずっと落ち着かなくなっていました。 その夜、みんなで遅くまで飲んで語り合った後で、彼と二人、ホテルのバーに移ったのは、もう誰の目から見ても自然な流れだったのでしょう。会話は昔話ばかりでした。あの頃、お互いが何を考え、どうして別れたのかなんて、もう気にならないようなフリをして。だけど、彼の目が私を見つめるたびに、言葉にならない感情が胸を締めつけてきました。 「今日は泊まっていくの?」彼がそう聞いたとき、私は一瞬答えに窮しました。「ううん、もう遅いし帰るつもり」そう返した声が、自分でも驚くほど震えていたのを覚えています。でも、そんな私の弱さを見抜かれたように、彼が微笑むと、全てを崩されるような気がして目をそらしました。 それからのことは、あまりにも自然で、逆に恐ろしく思えるほどでした。気づいたときには、彼と一緒に部屋の扉を開けていました。薄く灯るランプの明かりの中、私はこれまで守り続けてきたものが、じわじわと崩れていく音を感じていました。彼の手が私の腕に触れるたび、心の中で警鐘が鳴る。それでも、止められなかった。身体よりも、心が求めていると、そう思い込んでいたのかもしれません。 その夜の出来事が、私にとって何を意味するのか、その時はまだわかりませんでした。ただ一つ分かっていたのは、戻れない瞬間に立ち会っているということ...