私はいつからか、隣の家に住む彼への気持ちを抑えきれなくなっていた。彼は私と同じく既婚者。そんな彼との関係は、ただの隣人以上の何物でもないはずだった。
「こんにちは、今日も良い天気ですね。」彼が優しく微笑みながら挨拶を交わす。その一言が私の日常に小さな光を灯す。
彼とのやり取りはいつも些細なこと。でも、その些細なことが私の心を揺さぶる。夫との関係は悪くない。けれど、彼との瞬間瞬間が私の心を満たすのだ。
ある夜、偶然彼と二人きりになった。月明かりの下、彼が言った。
「あなたと話していると、心が落ち着くんです。」その言葉に私の心は高鳴った。
しかし、すぐに現実が重くのしかかる。「私たち、こんなことしていいのかな…」私は自問自答する。彼もまた、同じように苦悩しているようだった。
「私たち、間違ってる…」彼が小さく呟いたその夜、私たちはただ手を握り合うだけだった。それ以上のことは何もなかった。けれど、その触れ合いは私たちの心を深く結びつけた。
日々は過ぎ、私たちの関係は何も変わらない。しかし、心の中は複雑な感情で満たされていた。愛する夫がいるという現実。そして、止められない彼への想い。
「もし、違う世界があったなら…」そんな空想にふけることもあった。けれど、私たちは現実を生きている。この感情とどう向き合うべきか、答えは見つからない。
夜ごとに繰り返される心の葛藤。彼への想いを胸に秘めながら、私はただ、日々を過ごしていく。愛する人がいながら、別の誰かを想う苦しみと戦いながら。
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