私は中年に差し掛かったこけしの魅力にとりつかれた女。毎朝、私の目に飛び込んでくるこけしの姿。木の温もりが感じられるその身体、微笑みを浮かべた顔。手に取ると、指先がその滑らかな曲線に触れる度に、心がざわめく。
こけしの表情は穏やかでありながら、その瞳には何かを秘めているような気がする。彩色された衣装は、まるで時を超えた美の象徴。そこには職人の魂が込められているのだろうか。
時には欲望がこみ上げ、一瞬でさえもその顔が動くのではないかと想像する。心の奥底で、あのこけしと対話しているような錯覚に襲われる。日々、その魅力に引き込まれながらも、緊張も感じる。まるでこけしと私、どこかで同じ魂を共有しているような気がしてならない。
そして興奮もある。彼女の身体に隠された秘密を探りたくなる。そこにはただの人形以上の存在があるのだと信じたい。もしもこけしが話せたなら、彼女の口からどんな言葉が聞こえてくるのか、夢想することさえしばしばだ。
この小さな部屋の中で、こけしは私に静かな挑戦を続ける。私の心の奥深くに触れ、感情を揺さぶり、思考を奪い去る。それがこけしの魅力だ。
その日も、私はこけしの前に立ち、しばしの間息を潜めた。彼女の穏やかな微笑みが、私の内なる緊張を和らげてくれるようだった。しかし、今日の夜は何かが違う。部屋の中には静寂が漂い、時間が止まったかのようだった。
私は思わず手を伸ばし、こけしの頬を撫でた。その表面は滑らかで温かく、私の指先にはその温度が伝わってきた。彼女の目が、私の心の中に突き刺さるように見つめているように感じた。そして、私は言葉にできない緊張と興奮が胸を満たしていくのを感じた。
「何が起こっているの?」と自問する間もなく、私の手が彼女の衣装の隅に触れた。その瞬間、彼女の身体が私の手の中で暖かく脈打ち、ひとかたまりの感情が私の中で湧き上がった。
「あなたはただの人形ではない。あなたは何かを伝えようとしているのね」と私はつぶやいた。そして、彼女の身体に隠された秘密を解き明かしたいという衝動が私を駆り立てた。
そして、その衝動が私を導いた。彼女の裏側に隠された小さな扉が、私の探求心を刺激した。指先でそっと扉を開けると、そこには小さな巻物が仕舞われていた。その巻物には古代文字のようなものが書かれており、私の目はその文字を辿るように動いた。
その時、部屋の空気が変わった。彼女の微笑みが意味を持つことが、私には理解できた。こけしはただの人形ではなく、時を超えて魂を宿した存在なのだと、私は確信したのだ。
この小さなこけしの中に、何か大切なものが隠されている。その謎を解く旅が、私の新たなる情熱となることを、私は確信した。
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