ねぇ……お願いだから、この話は誰にも言わないでね?
これは私の心の奥底に、ずっとしまっていた秘密。
でも、誰かに聞いてほしかったの。
静かに、そっと……寄り添うように。
あの日は、雨がしとしと降っていて??
まるで、心の中まで濡れてしまいそうな、そんな夜だったの。
主人は出張で留守。娘は実家に預けていて、
家には、義父と私だけ。
「ひと息つこうか」って、義父が静かにお茶を淹れてくれた。
いつもは無口な人なのに、あの夜は少しだけ饒舌で……
「こうして誰かと話せるのは、ありがたいものだな」って、
ぽつりぽつりと、昔の話なんかをしてくれて。
私は、つい油断してしまったのかもしれない。
なんだか心がほぐれて、安心してしまって??
そのうち、会話は静かになって、
私たちは、並んで座ったまま、時が止まったようだった。
そのとき、義父の手がそっと、私の手の上に重なったの。
あたたかくて、迷いがない手だった。
驚いたけれど、不思議と……嫌じゃなかった。
心のどこかで、誰かに頼りたかったのかもしれない。
ただ、「寂しい」と声に出せなかっただけで。
言葉は交わさなかった。
けれど、心の奥で何かがふっとゆるんだのを、私は感じた。
静かな夜、雨の音とともに、
私のなかに、あたたかい灯がともったようだった。
それきり、義父とその夜のことを話すことはなかった。
まるで、何もなかったかのように日々は過ぎていったけれど、
あの夜、私は確かに「誰かに寄り添ってもらった」ことを、
ずっと、忘れられずにいるの。
罪じゃないって、自分に言い聞かせてきた。
でも、ときどき胸の奥で、かすかな波が揺れるのよ。
それが、後悔なのか、優しさなのか……
まだ、答えは出せないまま。
お願い。
この話は、ここだけの秘密にしてね。
あの日、私が感じたやさしさと切なさは??
誰にも、知られたくないの。
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