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強欲な叔母が1日3回も俺のマツタケを貪る


「これ、あんたが採ったの?」


叔母はそう言って、俺が差し出したマツタケをじっと見つめている。秋の朝、山奥の森で拾ったばかりの、まだ湿った香りが漂う。それを彼女は、まるで宝物のように指先で軽く撫で、鼻先に近づける。


「そうだよ。ちょうど山に行ってみたら、運よく見つけたんだ。」


俺が言うと、叔母は目を細めて微笑んだ。その顔には、どこかしら欲望の色が見え隠れしている。


「まあまあ、あんたもなかなかやるじゃないの。でもね、こんなに立派なのを見つけるなんて、普通じゃないわよ。」


彼女はそう言いながら、ゆっくりとマツタケを口元に運び、ふわりと香りを楽しんでいた。叔母のこの様子を見るのは、もう慣れたものだ。彼女は昔から、この香り豊かなキノコに目がなくて、毎年秋になると必ず俺のところに来る。


「今日はどうするんだ?」と俺が尋ねると、叔母は顔を上げて、悪戯っぽい笑顔を浮かべた。


「どうするも何も、決まってるでしょう? まずは昼に焼きマツタケ、それから夕方には土瓶蒸し、そして夜は…」


彼女は唇を軽く舐める仕草をして、俺をじっと見つめた。


「夜は、あんたの特製のマツタケご飯で締めくくるのよ。」


俺は思わず苦笑した。毎年のこととはいえ、叔母のこの強欲さには本当に驚かされる。まるで一日中マツタケに溺れたいかのようだ。


「でも、さすがに1日3回は食べ過ぎじゃないか?」


俺がやや心配そうに尋ねると、叔母はすぐさま首を振った。


「そんなことないわ。マツタケは秋の贅沢、年に一度しかないものでしょう? それを惜しんでどうするの。これくらい楽しんだってバチは当たらないわ。」


叔母のその言葉には、どこかしら切実さが含まれていた。そう、彼女にとってマツタケは単なる高級食材じゃない。何かもっと深い意味を持っているのだろう。


「ねえ、昔、私があんたくらいの頃はね、家族みんなでマツタケを食べるのが一番の楽しみだったのよ。おじいちゃんが山で採ってきた新鮮なやつを、家族で囲んで食べる。それが、一年に一度の特別な日だったわ。」


その声には懐かしさが滲んでいる。俺は少し驚いた。叔母が家族の思い出をこんな風に話すなんて、滅多にないことだからだ。普段はもっと、軽口ばかり叩く人なのに。


「でも、いつの間にかみんな忙しくなってね、そんな時間もなくなっちゃった。今じゃ、マツタケを一緒に囲む家族もいなくなってしまった。」


そう言って、叔母はふっとため息をつく。その表情が、一瞬だけ寂しそうに見えた。


「だから、あんたが採ってきてくれるのは、本当にありがたいのよ。これで、私もあの頃の幸せな時間を少しだけ思い出せるんだもの。」


俺はその言葉に少し心が揺れた。叔母がこんな風に本音を語ることは、めったにない。彼女がマツタケに執着する理由が、ただの贅沢ではないことがわかった。


「そっか…。だったら、今日は一緒にゆっくり楽しもうよ。俺も料理するからさ。」


そう言うと、叔母は少し笑って「そうね、それがいいわね」と頷いた。


---


昼食の焼きマツタケは、シンプルに炭火で焼いて塩を少々。香りが立ち込める中で、叔母は無言で一口、また一口と味わっていた。


「やっぱり、この香りよね。これを一年待ってたんだから…最高だわ。」


夕方には、土瓶蒸しを準備していた。出汁の香りとともに、マツタケの風味が広がる。叔母は土瓶をじっと見つめ、慎重に蓋を開けた。


「この瞬間がたまらないのよ。熱々の蒸気に、マツタケの香りが染み込んで…最高。」


彼女の顔には満足感が溢れていた。俺もその表情を見て、なんだかホッとした気分になる。


夜、最後のマツタケご飯を食べる頃には、もう叔母も少し疲れているようだった。だが、それでも彼女は茶碗をしっかりと手に持ち、最後の一粒まで丁寧に食べていた。


「美味しかったよ、ありがとう。あんたの料理は、やっぱり最高ね。」


叔母がそう言って微笑む姿を見て、俺はなんだか誇らしい気持ちになった。


「でも、どうしてそんなにマツタケが好きなんだ? もちろん美味しいけどさ、他にも美味しいものはあるだろ?」


俺が冗談めかして聞くと、叔母は少し照れくさそうに笑った。


「マツタケってね、あの頃の家族を思い出させてくれるのよ。食べると、なんだかみんながそこにいるような気がしてね…だから、どうしても食べたくなるの。」


その言葉に、俺は少し黙り込んでしまった。叔母が強欲に見えたのは、実はその裏に深い思い出が隠れていたからだったのだ。


「だから、来年もまたあんたに頼むわね。私のために、マツタケをいっぱい採ってきてちょうだい。」


彼女はそう言って、最後に軽く笑った。俺はその笑顔に安心し、また来年も彼女のためにマツタケを採りに行こうと心に決めた。


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叔母の強欲さは、ただの欲望ではなかった。それは、家族の思い出を紡ぎ続けるための、彼女なりの愛情だったのだ。





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