ねえ、どうしてこんな気持ちになってしまったのかしら。
私は“お母さん”なのに……あなたにそんな目を向けられたら、女としての私が、目を覚ましてしまうじゃない。
あなたのお父さんと再婚して、もう五年になるわ。
優しくて、誠実で、でもちょっと不器用なあの人。最初はそれなりに幸せだったのよ。でも、あなたが大学から戻ってきたあの年の梅雨――すべてが少しずつ、変わりはじめたの。
「おかえりなさい、翔太くん。雨、ひどかったでしょ? タオル、そこにあるわよ」
玄関で濡れた髪をかき上げながら、あなたがふっと笑った。
「ありがとう、由美さん。あ、いや……お母さん、だよね」
その“お母さん”って呼び方が、どうにも照れくさそうで、私はつい笑ってしまった。
「どっちでもいいわよ。呼びやすいように呼んでちょうだい」
それが最初のすれ違いであり、運命のきっかけだったのかもしれない。
夜、リビングで並んでテレビを観るとき、ふとした瞬間に手が触れそうになる。
洗濯物を干していると、あなたがそっと横に立つ。
二人きりの空間が、あまりにも自然で、でも妙に息苦しくて。
そして、あの夜。
雨の音がひどくて眠れなかった私は、台所で温かいミルクを作っていた。
背後に気配を感じて、振り向いた瞬間、あなたと目が合った。
「眠れないの?」
「……うん、ちょっとだけ。雨、すごいから」
そのときのあなたの目には、優しさと、そしてもうひとつ、私を“女性”として見つめる何かがあった。
気づいてはいけないと分かっていながら、私はその視線を受け止めてしまったの。
――これは、母と息子じゃない。
でも、心がもう、止まれなかったのよ。
その晩、私は翔太と向かい合って、カップに注いだミルクを渡した。
湯気の向こうに浮かぶ彼の目が、あまりにもまっすぐで、私の胸をざわつかせる。
「ありがとう……けど、由美さんも眠れなかったんだね」
「ええ……雨の音、胸に響いてしまって。年を取ると、余計なことばかり考えちゃうのよ」
「余計なことって……どんなこと?」
少しだけ、間があった。
翔太は、マグカップを両手で包みながら、私の目をじっと見ている。
「たとえば、どうしてこんなにあなたが気になるのか、とか――」
それは、心の中だけにしまっておくべき言葉だったのに。
私は、言ってしまった。
翔太はその言葉に、驚いたような顔をして、でも……すぐに目を細めて微笑んだ。
「僕も……ずっとそうだった。帰ってきてから、由美さんのことが気になって仕方がなかった。お父さんの妻だってわかってるのに、気持ちが抑えられなくて」
「だめよ……翔太くん、そんなの……私たち、家族じゃないの」
「家族って言われると、もっと辛くなる。だって、僕が見てるのは“女の人”としての由美さんなんだよ……」
その一言で、私の中にしまい込んでいた何かが崩れた。
お互いに罪を背負う覚悟もないまま、ただ感情に流されて――
私はそっとカップを置き、立ち上がろうとした。
でも、翔太の手が、私の手首をやさしく、でもはっきりと掴んだ。
「行かないで。……お願い、一晩だけでも、“お母さん”じゃなくて、由美さんとして、そばにいて」
その声に、私は抗えなかった。
年下の、でもまっすぐな愛情に突き動かされて、私は彼の胸にそっと身を預けた。
雨の音は、まるで私たちの背徳を隠すように、強く屋根を叩いていた。
翔太の腕に抱かれて、私は初めて、母でも妻でもない、ただ一人の「女」として――
自分の存在を確かめていたの。
この恋が許されるはずもないことくらい、分かっていた。
だけど心だけは、彼に向かってしまったの。
ねえ、どうしたらよかったのかしら?
もし、あなたがあの夜、私の手を取らなかったら――
今も私は、“お母さん”でいられたのかしら……?
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