義母が湯上がりの髪をタオルで拭きながら、廊下を通り過ぎた。
石鹸の香りに少し焦げたようなシャンプーの匂い。あれが、俺の心を狂わせるのだ。
白いバスローブに包まれた肌が一瞬、リビングの明かりに照らされて艶めいた。
その姿を目で追ってしまったことに、俺は気づかぬふりをした。
いや、気づかぬふりをしたかった。
義母は俺の妻――由香の母親。
なのに、あの人の視線の奥にある色気が、俺の神経をじわじわ蝕んでくる。
「今日は寒いわね。お茶でも淹れましょうか?」
優しい声。年相応の落ち着き。
だが、俺にはそれがもう、毒だった。
夜が深くなるにつれて、リビングの灯りは義母の肌を柔らかく照らす。
少しだけ開いた胸元。脚を組むたびに揺れる太もも。
無意識なのか、わざとなのか。いや、俺が勝手に見てしまってるだけかもしれない。
――でも、もう限界だった。
「…義母さん、」
声が震えた。自分でも聞いたことのない声。
義母は湯呑を持った手を止めて、俺を見た。
その瞳は、深い夜のように静かだった。
でも、たしかに俺を見ていた。
「……どうしたの?」
その問いに答えられなかった。
代わりに喉の奥から湧き上がったのは、罪の意識でも、後悔でもなく――
**欲望だった。**
俺は、妻の母に惹かれている。
その身体、肌、吐息までも、すべてが俺を狂わせる。
けれど、手を伸ばしてはいけない。
触れた瞬間に、全てが壊れる。家庭も、絆も、俺自身も。
それでも夜は静かに、その香りとぬくもりで俺を誘ってくる。
抑えても、押さえきれない。
「由香には…内緒よ?」
ふと、耳元でそう囁かれたような気がして、俺は震えた。
幻聴か、それとも――
義母の笑みが夜に溶けていく。
俺の理性も、ゆっくりと。
義母の笑み――それはまるで何も知らぬ仏のように、静かで、穏やかで、残酷だった。
「今日は遅いのね。由香ちゃん、帰ってこないの?」
俺は小さく頷いた。
仕事で遅くなる、という連絡はもらっていた。
それなのに俺はなぜ、こんなにも義母の在宅を確認した上で、
わざわざこの時間に帰宅したのだろう。
答えは簡単だ。
**あの人がいるこの家に、いたかった。**
「お義母さんは……お一人なんですね、いつも」
「ええ。でももう慣れました。由香が結婚してからは、なんだか気が抜けてしまって。
あなたたちが帰ってくると、家が華やぐから嬉しいわ」
その言葉に、なぜだか胸がざわめいた。
それは彼女が自分を待ってくれていたように感じたから――
都合のいい幻想だとしても、溺れたくなってしまう。
「こんな夜、誰かと話せるのって……ちょっと安心しますよね」
義母はふっと笑った。
灯りの下で、その目元にできた微かな皺まで、美しく見えた。
「あなた、少し疲れている顔してるわ。何かあったの?」
「……いえ、大丈夫です。
でも……」
喉元まで出かけた言葉を、ぎりぎりのところで呑み込んだ。
“でも、あなたに会いたかった”――そんな言葉を口にすれば、すべてが壊れる。
ただの義母と義理の息子という関係が、崩れてしまう。
俺は立ち上がって、キッチンへと逃げるように向かった。
「何か冷たい飲み物、持ってきますね」
そう言って振り向いたとき、義母は少し驚いたようにこちらを見ていた。
「……ねえ」
「はい?」
「背中、少し震えてるわよ。寒いの?」
そう言いながら、義母は自分の羽織っていたカーディガンを脱ぎ、俺の肩にふわりとかけた。
柔らかい、温かな感触。
それはまるで、罰のようだった。
“逃げようとしても、もう逃げられない”
そう囁かれている気がした。
俺は目を閉じて、その温もりを拒むこともできず、
ただ――黙って、その場に立ち尽くした。
カーディガンのぬくもりが、肩にじんわり染みてくる。
義母の体温。
それだけで、心臓が速くなるのが自分でもわかった。
キッチンで冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。
冷気が手にしみた。――少し、冷静になれた気がした。
戻ると、義母は窓の外を眺めていた。
レースのカーテン越しに揺れる横顔。
どこか遠くを見ているような眼差しが、妙に切なかった。
「……私ね、こういう夜が、一番つらいのよ」
「え?」
ぽつりと、彼女はつぶやいた。
視線は窓の外の闇へ向けたまま。
「子どもが巣立って、夫もいなくなって……
でも女って、急に“ただの母親”にはなれないのね。
どうしても、自分が女だったことを忘れられなくて。
時々、すごく……空しくなるの」
俺は返す言葉を失った。
それは、娘の夫である俺が聞くには、あまりにも私的で――
あまりにも、**女の心**だった。
「……ごめんなさい、変なこと言ったわね」
そう言って笑う顔は、少し照れていて、それがまた、**恐ろしく魅力的だった。**
「変じゃないです。俺……なんか、わかる気がします」
義母は少し驚いたようにこちらを見て、それから、
ふっと、安らぐように笑った。
沈黙が流れた。
だが、それは重苦しいものではなかった。
ただ、なにかが…
今までとは違う何かが、静かに、確実に二人の間に芽吹いたのを感じていた。
「……ねえ」
義母が小さく口を開いた。
「さっき、“寒い”って言ったわよね」
「ええ、少し…」
「じゃあ、温めてあげましょうか。お茶、淹れ直すわ」
そう言って立ち上がると、義母は何気ない動作で俺の肩に手を置いた。
その手のひらは、あたたかかった。
ただの親切に――感じられなかった自分が、
心のどこかで恐ろしかった。
**けれど、もう戻れないのかもしれない。**
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