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枯れ木も山の賑わい、それでも花は咲く


「私なんて、もう枯れ木も山の賑わい程度でしょう」

由美子がそう零したのは、同窓会の帰り道だった。久しぶりに会った友人たちは皆、結婚し、子を持ち、それぞれの人生を歩んでいた。五十路を前にして独り身の自分は、賑やかしの一人に過ぎないと感じていた。

枯れ木も山の賑わい
枯れ木も山の賑わい


「枯れ木も山の賑わい、か。ひどい言い方だな」

隣を歩く誠一が苦笑した。同窓会の幹事で、独身のまま還暦間近になった男だ。学生時代はろくに話したこともなかったが、今夜は自然と隣に座り、気づけば二人で夜道を歩いていた。

「つまらないものでも、無いよりはマシってことでしょう。私、まさにそれだなって」

「その諺、本当はもっと謙遜の意味合いが強いんだよ。枯れ木だって山の風景の一部になる、大事な存在だっていう」

誠一の言葉に、由美子は足を止めた。

「知ったかぶり」

「本当だって。俺は君と話すために今夜来たようなものだ」

思いがけない告白に、由美子の胸がとくんと鳴った。誠一はいつも寡黙で、感情を表に出さない人だった。それが今、まっすぐにこちらを見ている。



「学生時代、ずっと気になってた。でも、言えないまま時間だけが過ぎた」

「三十年以上前の話じゃない」

「三十年経っても、気になる人は気になるものらしい」

由美子は思わず笑ってしまった。若い頃なら、こんな遠回しな告白に苛立っていたかもしれない。でも今は、その不器用さこそが愛おしく感じられた。

枯れ木も山の賑わい――自分を卑下する言葉として使っていたその諺が、誠一の言葉によって全く違う意味を持ち始めていた。枯れても、朽ちても、山の一部として在り続ける。それは寂しさではなく、確かな存在の証だったのだ。



「今度、ゆっくり食事でもどう?」

誠一の誘いに、由美子は静かに頷いた。夜風が二人の間を通り抜け、遠くの山の稜線がうっすらと月明かりに浮かんでいた。

枯れ木にも、まだ花は咲く。由美子はそう、確信していた。


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