昼下がりの光が、カーテンの隙間からやわらかく差し込む。
時計の針は、まだ三時を過ぎたばかり。
夫は出張で、子どもたちは学校――
この家にいるのは、私ひとりだけ。
けれど、リビングにはまだ、誰かの気配が残っていた。
クッションのへこみ、テーブルの上の湯気の消えたコーヒー。
そして、私の唇に残る――微かな温もり。
「また、来ますね」
彼がそう言って扉を閉めたのは、ほんの数分前だった。
静けさが戻ると同時に、心の奥で何かが疼く。
罪とわかっていても、あの人の声を思い出すだけで身体が熱くなる。
窓の外では、洗濯物が風に揺れていた。
白いシャツの袖が、まるで彼の手のように触れてくる。
誰にも言えない午後。
それでも私は、また同じ時間を待ってしまう――。
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