「ちょっと、お義母さん……ナメコのヌルヌル、洗わないんですか?」 台所に立つ義母の背中を見つめながら、私はそう問いかけた。 鍋の中に直接、袋からザザーッとナメコを放り込む手つきは迷いがない。 「このヌメリが美味しいのよ。洗ったらもったいないでしょ?」 振り向いた義母は、にっこりと笑う。 やわらかな唇の端が上品に上がり、まるで少女のような可愛らしさを残している。 けれど、その瞳にはどこか艶があった。 「でも……」 私は言葉を濁した。 本当にそのヌメリが美味しいのか、それともただの手間を省いているだけなのか。 いや、そんなことはどうでもよかった。 私の視線は、鍋ではなく、義母の白く細い指へと吸い寄せられていた。 「ほら、味見してみなさいな」 そう言って義母は、箸でナメコをすくい上げ、私の唇にそっと近づけた。 ぷるんと震えるナメコが、義母の指の動きに合わせて揺れる。 その艶めかしさに、私は息を呑んだ。 「……熱いですよ」 逃げるように後ずさると、義母はくすっと笑う。 「大丈夫よ、ふーって冷ましてあげる」 そう言って、彼女はナメコを口元に持っていき、ふうっと優しく息を吹きかけた。 温かく湿った吐息が、私の頬にまで届く。 「さあ、召し上がれ」 私は、そっと口を開いた。 熱くとろけるような食感が舌に絡みつく。 ぬめりとともに、何か言い知れぬ甘美な感覚が広がった。 「……やっぱり、このままが美味しいでしょう?」 義母は満足げに微笑む。 私は何も言えずに、ただ頷いた。 それが、私たちの秘めた関係の始まりだった――。...