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「義父の指先が触れたとき」~夫の父に惹かれてはいけないのに~


夫の父に惹かれるなんて、あってはならないこと。 そうわかっているのに——。

義父は、夫とはまるで違う雰囲気を持っていた。 落ち着いた声、ゆったりとした仕草。 年を重ねた男性特有の包容力。

「お前は本当に気が利くな」

夕食の準備を終えた私に、義父が優しく微笑んだ。 夫の出張中、義父の世話をするためにこの家へ泊まり込んでいる。 それだけのはずだったのに、私はどこかで期待していたのかもしれない。

食事の後、後片付けを終えて居間に戻ると、義父がソファに腰を下ろしていた。 手にはグラス。 琥珀色の液体を揺らしながら、静かに私を見つめる。

「一緒に飲むか?」

少しだけ、とグラスを受け取る。 義父の指先が私の手に触れた瞬間、心臓が跳ね上がった。

「……驚いたか?」

静かな声に、私は思わず首を横に振った。 けれど、義父の視線が私の心の奥を見透かしているようで、視線を逸らす。

グラスの縁をなぞる義父の指。 その動きを無意識に追ってしまう。

「お前がこうしていてくれると、家が温かくなるな」

その言葉が、なぜか胸の奥をくすぐる。

「お義父さん……?」

呼びかける声が、わずかに震えた。 義父の手が伸び、そっと私の髪を撫でる。

「いい子だな……」

甘い吐息が耳元に触れたとき、私は身悶えるほどの熱に包まれていた。


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