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五十歳、まだ女でいたい ― 寸止めの葛藤


五十歳になったいま、私は毎日のように自分の心を持て余しています。

もう落ち着く年齢なのに、なぜこんなにも心も体も疼いてしまうのだろう――。

https://youtu.be/FikJugZ3z5E


きっかけは、職場にやってきた契約社員の彼でした。

まだ三十代半ば、息子とそう変わらない年齢。

けれど、彼の視線が私に注がれるたび、心臓はいやに大きな音を立てる。

「お疲れさまです、部長」

そう言って軽く笑いかけられるだけで、女である私が目を覚ましてしまうのです。


ある日、残業でふたりきりになった夜。

コピー機の前で、彼の指先が私の手に触れた。

ほんの一瞬だったのに、電流のような衝撃が全身を駆け抜けました。

「すみません」

彼は照れくさそうに笑った。

けれど、その笑顔の裏に潜む熱を、私は見逃さなかった。


心の中で理性が叫びます。

――だめよ、あなたは既婚者。彼は部下。

でも、もうひとつの声が囁くのです。

――まだ、女でいたいんでしょう?


次の夜、また残業でふたりきり。

資料を確認しようと身を寄せた瞬間、彼の吐息が耳元をかすめた。

その温かさに、全身が震える。

気づけば、私の指先は机の縁を必死に掴んでいました。

あと少し、ほんの数センチ顔を近づければ――唇が触れてしまう。


「……部長」

彼の声が低く沈む。

呼吸が交わり、時間が止まる。

けれど、私は寸前で視線を逸らし、椅子を立ち上がりました。


「だめよ……」

そう呟くのが精一杯でした。


理性と欲望のせめぎ合い。

抱きしめられたい。唇を重ねたい。

でも、それを許した瞬間、すべてが壊れてしまう。

だからこそ、ギリギリで踏みとどまる。


その夜、家に帰っても心臓の鼓動は収まらず、布団の中でひとり震え続けました。

夫と眠る同じ部屋で、私は女としての渇望に苛まれる。

「どうして、私はこんなに揺れてしまうの……?」


翌日、彼と目が合う。

何もなかったように仕事をこなすけれど、互いの心には昨夜の寸止めが生々しく残っている。

視線が重なれば、あのときの熱が蘇る。

触れなかった唇が、触れなかった手が、かえって強く疼くのです。


五十歳、まだ女でいたい。

女として求められたい。抱きしめられたい。

けれど理性が、「寸止め」という苦しい檻に閉じ込めてしまう。


私は今日も笑顔を装いながら、その葛藤を胸に秘めています。

――いつか、この寸止めを超えてしまう日が来るのか。

それとも、女の盛りを抱えたまま、永遠に揺れ続けるのか。



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